インターステラー/【重力波発見記念】家族愛の物語だけじゃない、一般相対性理論に基づいたSF!!

作品情報
【おすすめ度】★★★★★ 5/5点
【ジャンル】SF・ヒューマン
【公開】 2014年
【監督】クリストファー・ノーラン
【出演】マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、マイケル・ケイン、ジェシカ・チャステイン、マット・デイモン、etc.
ストーリー
そう遠くない近未来。地球は、環境悪化のため食糧難になり人類のは滅亡の危機に貧していた。元NASAのパイロットだったクーパーは、農業を営みながら父親と二人の子どもと暮らしていた。ある日、娘のマーフが『幽霊』と呼ぶ怪現象を目撃した際、それがバイナリデータでできた座標であることに気がつく。その座標に行ってみると、そこで驚愕の事実を知ることになる・・・。
こんな人におススメ
SF映画が好きな人にはおススメです。特にリアリティを追求しているような作品が好きない人は、絶対にハマります。
『2001年宇宙の旅』『コンタクト』や、最近の『ゼロ・グラビティ』『オデッセイ』などが好きな人なら是非観たほうがいいでしょう。(と言うより、そういう人は既に観ていると思いますが。。。)
感想・ネタバレ無し
この映画は、去年、既に鑑賞していた作品ですが、先日「重力波」が初観測されたということ受け、改めてBlu−rayを借りて見ました。
「なぜ重力波とインターステラー?」と思う人もいるかもしれませんが、「重力波」を観測した施設LIGOを作った一人、キップ・ソーンがこの映画の科学コンサルタント兼製作総指揮を務めていたのです。

今までに無いな宇宙の描かれ方
これまで数多くのSF映画が公開されていますが、この映画のように『一般相対性理論』を可能な限り正確に描いた作品はありませんでした。監督のクリストファー・ノーランもかなりのこだわりを持って映像を作っているそうです。実際のブラックホールやワームホールを観たことが無いので、正しい描写なのかはわかりませんが、今まで映像化されていたものとかなり違う表現がされています。
例えばブラックホール。今まで想像していたブラックホールは、ただただ真っ暗だったのだだが、この映画のブラックホールは周りがとても明るいんです。これって科学の世界では当たり前なのだそうです。
このブラックホールとワームホールの描写だけでもこの映画を見る価値があると思います。
※画像はネタバレ感想内に掲載してます。
演技力抜群の俳優陣
この映画は、科学技術やその描写についてとても高い評価を受けていますが、出演している俳優陣もまたすごい演技力で、物語にぐっとのめり込めます。
・主人公クーパーを演じたマシュー・マコノヒー

家族を愛する元NASAのパイロットを演じています。
家族への思いと、地球を救うという使命感、宇宙への好奇心、と様々に交差する感情をうまく表現しています。私は彼の演技だけで、主人公のクーパーにどっぷりと感情移入してしまいました。
・本作のヒロイン。アメリア博士を演じたアン・ハサウェイ

この女優さん昔からキレイだと思っていましたが、今回もあますところなくキレイですね〜。
しかも、博士という役どころ通り、知的な雰囲気を醸し出しています。しかしそれだけではないです。論理的な思考と自身の感情が入り乱れる感じもとっても自然でいい演技です。
・クーパーの娘のマーフィー(マーフ)を演じたマッケンジー・フォイとジェシカ・チャステイン
本作の重要なキーマンになるマーフを演じたこの二人。

子役のマッケンジー・フォイも子供ながらに、とても良い演技を見せています。マシュー・マコノヒーと本当の親子なんじゃないかと思ってしまうほどです。

大人のマーフを演じたジェシカ・チャステイン。宇宙へ旅立ってしまった父への恨みに反して、物理学者となったマーフの感情をうまく表現しています。この女優さん、先日観たオデッセイで、宇宙船の船長を演じているんですね。責任感や使命感を演じさせたら一品。とても真っ直ぐな目を持っている女優さんですね。
小難しい科学も魅力だが、家族愛だけでも観る価値あり!
この映画、公開前から高い科学考証が話題となっていた作品ですが、それだけが魅力じゃありません。
大事なのは『愛』!そう、この映画のテーマは『愛』なのです。そんな人間の根本を見つめるいい作品に仕上がっています。
相対性理論とか5次元とか、ブラックホールとかワームホールとか、科学用語がたくさん出てきますが、十分理解できるよう映画の中で説明がされているので、化学の知識が全く無くても大丈夫な作品になっています。
感想・ネタバレあり
※ココから先は、ネタバレがあるので、映画をご覧になった方のみお進みください。
ネタバレ感想を読む
多くの間違った判断だったが、それが全人類の救いとなった
ブランド教授が嘘をついてくれたおかげで、クーパーやアメリアが宇宙へと旅だったのです。

ブランド教授が「ラザロ計画のプランAは不可能」とクーパーやアメリアに打ち明けていたら、きっと宇宙へ行くことはなかったでしょう。
しかも、最期を迎えた教授がマーフに打ち明けることで、クーパーからのブラックホール解析データに気がつくことができたのです。
それを考えると、ブランド教授を攻めることはできないですね。
他にも、主人公の宇宙航行の目的である「人類が居住できる惑星探査」の正解は、実はエドマンズの星だったわけです。
一見すると、エドマンズに会いたいアメリアの感情として探査を却下されてしまい、主人公たちが毎回間違った選択をしていたように思います。しかし、全てを見終わってみると、その失敗が全ての成功を招いていたことがわかります。
つまり、一番最初にエドマンズの星に向かっていた場合、クーパーはブラックホールに飲み込まれることもなく、全人類を移住させるためのラザロ計画プランAは実行できていなかったわけです。となると、暴走したマン博士さまさまです。

彼が、エンデュランス号を壊してくれなければ、ガルガンチュアに吸い込まれることもなかったわけですから・・・
とてもハラハラさせる地球と宇宙の描写!!
物語の終盤、ブランド教授の死後マーフが自宅の部屋に宇宙のヒントが隠されていると思い、気がつくのが先か兄が戻ってくるのが先か、ハラハラさせられるシーンが有ります。地球と全く時間軸の違う宇宙空間と5次元を、交互に描写していきます。
この展開、観客からすれば「早く早く!」っておもう編集方法ですが、冷静に考えていると、時間の進み方が全く違う宇宙空間なので(5次元においては時間と言う概念がないに等しい)ので全く焦ること無いはずなんです。
まあ、それはそれ、物語の流れとしては、気持ちがこみ上げるいい演出になっていました。
科学考証はブラックホールとワームホールのみ?
何度も言うようですが、この作品は一般相対性理論を元に出来るだけ正しいと思われる描写が売りの作品です。ただ、それ以外のところで、「?」がつくシーンが多く見受けられます。


ブラックホールについては、type-rさんのブログで、非常に詳しく説明されてるので、とても参考になります。
・過去数年に渡り12人の人間が宇宙に行っているのに、地球上の人々はNASAが存在することを知らなかった?
ロケットが何度も打ち上げられているはずなのに、地球上の人たちは全く気がついていなかったと言うのは無理があるのでは?
・星々の航行距離が変では?
土星のワームホールまで2年かかるのに、人類が生存できそうな3つの星(ミラーの星、マンの星、エドマンズの星)がそれぞれ数ヶ月程度で到達できる距離にあるのはあまりにもおかしいです。単純に考察すると、地球と火星くらいの距離の間に、人類が住めそうな星が3つもあるのです。
・時間経過が影響するほどの重力なのに意外と平気そう。
ミラーの星では、1時間が7年になるほどの影響がある重力が作用しています。つまり光ですら相当曲がってしまう重力なはずなのに、人は普通に歩けるし、星はブラックホールに吸い込まれていないし、ロケットで簡単にその時空から脱出できてしまうってどうなんでしょう・・・
・ブラックホールの事象の地表面(シュバルツシルト境界)ギリギリから船が逃げ出すことができるの?
劇中のクライマックスで、アメリアを載せた母船エンデュランス号は事象の地表面スレスレから最大出力で抜けだして、エドマンズの星へと向かいます。でも事象の地表面って光が抜け出せなくなる境界線なわけです。つまり、その境界線ギリギリってことは、光のスピードでやっと抜け出せる場所ということになります。ってことはエンデュランス号が光の速さで抜け出たことになりますが、それはどう考えても無理でしょ!
・ミラーの星で、アメリアの行動が不可解
ミラーの星で、大ツナミが襲ってきているのに「命より大事なデータ」のためブラックボックスを回収しようとします。
でも待ってください。人が住めるかどうかのデータですよ。どう見てもあんなツナミが起きる星なんて、人間住めなくない?って気づかないのが不思議でなりません。
ただ、これだけ矛盾をあげていますが、あくまでSF(サイエンス・フィクション)なので、そんなところは正しくなくてもいいんです。
物語の性質を上げるために、あえて綿密な科学考証されていないと考える方がいいと思います。
とにかく、私には最高のSF作品になったことは間違いありません。
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SF, ヒューマン